R元年度ラパス便り第3回

“4-days field trip in Baja California Sur ”

 8月27日~30日、3泊4日のフィールドトリップが南バハカリフォルニア州の3つの街で行われました。このフィールドトリップは、私たちにとってバハカリフォルニアの多様性を肌で感じられる貴重な機会です。教室の中だけでは得られない実体験に基づいた自分だけの知識を得られることもまた、このプログラムの非常に優れた点だと思います。

 目的地に到着する前にMulege(ムレヘ)という街の道端の崖に、古代から伝わる鹿、魚、昆虫の壁画を見ることが出来ました。ラパス内の博物館でも確認しましたが、やはり現物を目にすると考えさせられるものがあり、どう考えても人間の手に届かない高い崖の上に描かれた絵に古代文明の不思議を感じさせられました。

 

 ラパスから約5時間、バスでの移動を経て最初に到着した町はSanta Rosalia(サンタロサリア)です。フランスが介入した鉱業の歴史が残るこの町は、ヨーロッパ風の景観を残しており、当時のこの町の産業だけでなく、街全体に対するフランスの影響力の大きさを表しています。鉱業で栄えた光の裏側には、不平等な貿易や産業排水による海水の汚染など様々な問題との格闘があったと言います。

 

 

 2日目はムレへ地域の電力供給を担う地熱発電所を訪問しました。驚いたことにこの地域の34%の電力はこの地熱発電所から供給されており、またムレへの発電所は、カリフォルニア半島北部にある最大の発電所とラパスの発電所の3つの中で最も小さい規模となっています。地熱発電の方法は単純で、石油を必要とする火力発電や、細かな手入れが不可欠なその他の発電方法よりも発電コストが低く、経済的な効果がありますが、一方で十分な高さの地熱に恵まれた地域でしか発電できないのが問題点です。鳥取もまた温泉で有名な通り、地熱に恵まれた土地ではありますが、その温度は十分ではないため発電できるレベルではないようです。

 

 3日目、Loreto(ロレト)という美しい海と、その恵みである海産物で観光客を呼び寄せている地域でフィールドトリップを行いました。船に揺られて沖合に進むと、日本では水族館でしかみられないような大型海洋生物たちが私たちを迎えてくれました。アシカと一緒にシュノーケリングをしたり、珊瑚の生息する遠浅の美しい海で泳ぎました。この地域は国家保護地域に指定されているため、ゴミのポイ捨てはもちろんのこと、島にある自然物を持ち帰ることも禁止です。また南バハカリフォルニア州で一番最初のミッション(カトリック教徒の教会)があり、ロレトの観光の一部として重要視されています。スペイン人が先住民の土地にやってきて、メキシコ文化とスペイン文化を融合した軌跡が見られ、ミッションが人々の暮らしやその背景にある文化に、いかに影響したのかを知ることができました。

 

 

 

 最終日はサンタマルゲリータ島で、水不足・電力不足の問題について学びました。今では私たちが電気を使うには、コンセントをさしてスイッチをオンにするだけですが、この島の人々は19:00〜2:00までの7時間しか電気を使うことができません。常夏にもかかわらず冷蔵庫ももちろん使用できません。風力発電と太陽光発電が故障のため停止した今、ディーゼル燃料が電力供給を担っており、また水不足のために用いられている海水を淡水処理する施設の運営にも用いられていますが、そのコストは非常に高く、地域の人々の協力を少しずつ得てなんとか運営が保てている状況です。この町の景色はラパスで見慣れた景観とは全く異なり、地域格差の現実を突きつけられたような気持ちになりました。

 最後に島の子供達と触れ合う時間があり、私たちは思い思いのお土産を手渡しました。おそらく初めて見たであろう私達外国人に少し緊張した様子の子供達に、私は日本の駄菓子をたくさん運んで¡Toma uno!(お一つどうぞ)と言いました。笛ラムネを鳴らしてみせると小さな女の子は一瞬驚いた顔をして、やりたいやりたい!と最高の笑顔を私に見せてくれました。あの時の子供達の輝いた笑顔を私は一生忘れないと思います。(地域学部2年藤田)

   

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