14期 アラブ首長国連邦

 السلام عليكم(アッサラームアライクム)

 こんにちは。研究インターンシップでアラブ首長国連邦に滞在しています。 「アッサラームアライクム」はアラビア語で「こんにちは」、意味は「あなたの上に平和がありますように」です。しかし、実際に使ったことはほとんどありません。ドバイはその人口の多くが外国人で、多くの人が母国訛りの英語を話します。また、言葉だけでなく、服装、食事、宗教、様々なバックグラウンドが異なる人が集まっていて、その中で働き、生活しています。本当に面白いです。
 そんな面白い私のアラブ首長国連邦生活は、たまに国際交流課を訪れ、留学情報を得ることから始まりました。留学に関する学内説明会のこと、COVID-19での渡航制限のこと、トビタテへの応募を決めてからは、書類作成や選考に関する私の不安や疑問にたくさん答えていただきました。私の好奇心を多くの方に支援していただいています。 私は、大学院2年目に渡航しました。まだ、遅くありません。もし、諦めや迷いがあるのならば、周りの人に相談してみてください。

 

 

第1回

 私が住んでいるアパートの近くにはモスクがある。モスクからは毎日5回の礼拝を知らせる「アザーン」がよく聞こえるため、日々生活の中でイスラム教を身近に感じられる。ここからは多くの日本人にとって馴染みのない「ラマダン」について書いていこうと思う。
 私は現在、イスラム教徒にとって大事な月である「ラマダン」を体験することができている。日程はイスラム暦に基づいて決定されるため毎年異なり、2022年のラマダンは4月1日~5月1日頃。ラマダン期間中に行われる「断食」は知っている人も多いのではないだろうか。日の出から日没までの間、ムスリムの義務の一つとして飲食を絶っている。UAEも、他のイスラム教の国々と同じように、人口の多くをイスラム教徒が占めるため、宗教について知っておくことや配慮をすることは重要である。日中に公共の場で飲食をしないこと、服装に気を付けるなど、普段以上にイスラム教の慣習を意識することが大切だ。
 一方で、私が滞在しているドバイはUAE国外からの労働者がとても多い。そのため、ラマダンも他の地域とはまた違った雰囲気でもあるのかもしれない。ドバイでは、日中でも多くの飲食店で食事が楽しめる。特に大きなモールでは、レストランやフードコートで様々な国籍の人々が食事をしている風景を見ることができ、拍子抜けした。一方で、企業などでは勤務時間が短縮される場合が多い。私がお世話になっている研究所も、ラマダン期間の労働時間は普段より3時間短く、多くの人が仕事中には昼ご飯を食べずに早めに切り上げて帰宅し、家族との時間を大切にしている。(私は毎朝7時前に朝食をとり 帰宅する15時半頃までご飯を食べないため、毎日お腹が空いて仕方ない。)そして、ラマダン期間が終わったら、ラマダン明け休暇がある。お祝いムードの街を見るのが楽しみだ。

フムスとファラフェル 1,000円の揖保乃糸 スキードバイ

 

第2回

 今回は、UAEの水事情について紹介する。UAEの水道水は、海水を淡水化して供給されており、飲用とすることができる。環境グループは、WHOの基準にも沿っていると発表している。しかし、ペットボトルの水が安く(500mlで1AED≒35円)、安全であるため、水道水を飲まない人も多い。私も普段、1.5Lのミネラルウォーターを箱買いし、料理や飲み水に利用している。一方で、沸騰させた水道水を何度も飲んだことがあるが、他の国でよくお腹を壊す私でもドバイでは体調に変化は無かった。また、日本と同じく軟水であるためシャンプーの泡立ちや髪の傷みも感じておらず、水に関するストレスを特に感じることなく過ごせている。
 世界一の集まるドバイ、「ドバイファウンテン」はこれまた世界最大の噴水である。毎日複数回開催される噴水ショーは、毎回異なる音楽と演出だそうだ。また訪れてみたいと思う。

ドバイファウンテンとバージュカリファ(Burj Khalifa)

 

第3回

 アラブ首長国連邦に到着して約3か月。6月は、先月に引き続きキュウリの栽培実験を行っている。私の周りでは常に様々な問題が起きるのだが、それらを一つ一つ解決しながら、やっと先日からキュウリの収穫を始めることができた。栽培温室内は特に湿度が非常に高く、立っているだけで汗が止まらない。
 暑いのは温室内だけではない。屋外の日中気温は連日40℃を越え、夜も30℃前後。7月と8月には50℃に達する日があるという。また、日本が梅雨の時期にも、雨は全く降らなかった(ドバイに来てからの3か月間でも、雨が降った跡を1度見ただけ)。雨は降らないがカラッと乾いた暑さではなく、これから9月にかけて湿度もさらに上昇するという。
 このような環境で動くことは体力をかなり消耗し、とても危険である。そのため、先日政府から「12時30分から15時までの屋外作業を原則禁止」するように通達があった。これは毎年政府から発表され、6月中旬から9月中旬まで適用される。私がお世話になっている研究所でも上記の時間帯は屋内作業を中心に行う。中断することのできない重要な作業を除くすべての屋外労働が規制される。そのため,勤務時間を変更する場合もあり、実際、外部の知人の職場では朝6時から仕事を始めるそうだ。
 一方で、屋内施設は冷房が効いているので、私には寒いくらいに感じる。もしドバイ観光に訪れることがあれば、日差しを遮るためにも、冷房対策にも、長袖の羽織は一枚持っていると良いだろう。

ラクダ 大きなスーパーマーケットにて日本産のホタテを発見 国産野菜も多く陳列されている

 

第4回

 今回は、日本でも利用可能なサービスが増えているデリバリーについて、紹介していく。ドバイでも、レストランの料理はもちろん、スーパーマーケットの日用品や食材、水、お花まで、注文から数十分で届けてくれる。料理は世界的なファストフードチェーン店だけでなく、個人の小さなお店でも対応していることが多い。日用品や食材も同様に、アプリ上で購入品を選択・決済まで行い、あとは指定の場所で受け取るだけとなる。各種常温冷凍冷蔵食品、ティッシュペーパーやビタミン剤、洗剤から香水まで大体のものは揃う。私はドバイで自分の車を持っておらず、暑い中で重い飲料水や冷蔵・冷凍品等を運ぶのは大変なため、これらをたまに利用する。届けてくれるのはバイクに乗ったライダーさんたちだ。どんなに暑い日でも、長袖長ズボンにプロテクターを着用して配達を行っている彼らには、とても感謝している(アプリから決済を行う際に、チップの額を指定できる)。
 さらに、届けてもらえるのは商品だけでなく、レンタカーやCOVID-19のPCRテストを家に呼ぶことができる。PCRテストは病院のドライブスルー等でも受けることが可能だが、デリバリーアプリやメッセージアプリ等で予約すると家や指定した場所まで来てくれ、移動する手間や交通費が抑えられて便利だ(2022年7月時点)。
 デリバリーを利用する際に使うアプリはいくつもあり、“Careem”や“talabat”、”Deliveroo”等…それぞれ扱うお店やサービスが少しずつ異なっている。“Careem”は中東を中心に使用されており、私はタクシーを利用する際にこのアプリを使っている。ドバイにはメトロも通っているが、タクシーの料金は日本と比較してかなり安いため、コンパクトなドバイ市内観光にはタクシー配車アプリを入れておくと便利だろう。

2022年2月末オープン「未来博物館」 額縁の形をした世界最大の建造物「ドバイフレーム」 道路を歩くラクダに遭遇

 

第5回

 私はトビタテ留学JAPANでドバイの研究所に受け入れていただき、インターンシップ生として通っています。5月から行っていたキュウリ栽培試験と分析、論文執筆が終了しました。現在は新しいプロジェクトにも参加し、トマトとキュウリを様々な温室で栽培しています。一緒に働くチームは、フランス、韓国、ウクライナ、インド、バングラデシュ、ネパール、そして日本…と多国籍で、外国人が人口の9割を占めるドバイをそのまま表しているように感じます。異なる宗教、食事、価値観、様々なバックグラウンド、それぞれの母国語と母国語なまりの英語が飛び交い、大変だけど面白い、そんな毎日を過ごしています。
 ドバイの知名度は近年上がってきているように思います。超高層ビルにキラキラの夜景、中東のビジネス拠点として、そして砂漠にラクダ。以前、私の日本人の友人たちにドバイに関するアンケートを実施しました。その中でも結果を見て私が驚いた設問について取り上げていこうと思います。ぜひ一緒に考えてみてください。
 「あなたはドバイがどこの国にあるか知っていますか?」
 回答してくれた人の約4分の1が「知らない」とのことでした。ドバイはアラブ首長国連邦(UAE)という国に位置しています。アラブ首長国連邦は文字通り、連邦制国家であり7つの首長国からなっています。ドバイ首長国はそのうちの一つです。次に、「アラブ首長国連邦の首都がどこか知っていますか?」これをあえて聞くということは、ドバイではないということです。答えは、ドバイのお隣の大きな首長国「アブダビ」です。ドバイはしばしばテレビやSNSで取り上げられたり話題になったりしているため、「ドバイ」は何となく知っていても国のことや首都、ほかの首長国について知らない人が多いのだと思いました。
 UAEは産油国としても知られており、外務省によると日本の対UAE貿易の輸入品目第一位が石油です。また、ドバイの印象について友人らに尋ねた際にも、「石油」「お金持ち」といった回答が多く寄せられました。一方で、UAEにおける最大産油国はアブダビであり、ドバイは潤沢ではありません。ドバイの観光業の発展は、石油に頼らない成長戦略の一つなのです。私がドバイに渡航する際には、友人から「石油王と友達になってきてね」と送り出されました。未だ達成できていませんが、残り3か月の滞在期間一縷の望みに賭けて…今回の記事を締めようと思います。アンケートに協力していただいた皆様、ありがとうございました。