THE LA PAZ TIMES 2009 特別編

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~TA(ティーチング・アシスタント)から見たメキシコ海外実践教育カリキュラム~

   メキシコ海外実践教育カリキュラムでは、フィールドワークのサポートのため修士学生がTAとして参加します。TAというカリキュラム参加学生とは違った立場、視点から、それぞれのフィールドワークについて、少し掘り下げてレポートしていきます。

【生態環境実習編~Espiritud Santo島でのエコキャンプ~】
農学研究科景観生態学研究室TA  吉田 美幸

毎年恒例のビッグイベントの1つである無人島Espiritu Santoでのキャンプがやってきました!!キャンプといっても私たちが行うのはエコツーリズムです。最近「エコ」という言葉をよく耳にしますが、そもそもここで言うエコツーリズムとはどういうことなのでしょうか。
 

 
エコツーリズムとは・・・

  1. 自然・歴史・文化など地域固有の資源を生かした観光を成立させること。 
  2. 観光によってそれらの資源が損なわれることがないよう、適切な管理に基づく保護・保全をはかること。 
  3. 地域資源の健全な存続による地域経済への波及効果が実現することをねらいとする、資源の保護+観光業の成立+地域振興の融合をめざす観光の考え方である。それにより、旅行者に魅力的な地域資源とのふれあいの機会が永続的に提供され、地域の暮らしが安定し、資源が守られていくことを目的とする。

日本エコツーリズム協会(http://sm.gr.jp/)

  さて、今回エコツーリズムを行ったEspiritu Santo Island(エスピリトゥ・サント島)はLa Pazの北50kmほど離れた所に浮かぶ大きな二つの島とその周辺にある無数の小島から成り、全長22km(約80.8k㎡)あります。周囲を海洋で囲まれているため、世界でもここでしか見られない生物が多く存在しており、生態学的に非常に価値が高い地域だと考えられています。そのためメキシコ政府によってカリフォルニア湾岸の植物および動物保護地域の1つに指定されています。また、この島を含む全域が「カリフォルニア湾の島々と自然保護区」として世界遺産にも登録されています。その為、この地域では生態系への人的影響を最小限に抑え、持続的利用を行うために、利用に際していくつかの活動規制があります。具体的には以下のように定められています。
[禁止事項]
 水上スキーの乗り入れ・ガイドの許可なしでの生物への接触・焚き火・外部からの生物の持込・生物への餌付け・歴史的遺産の持ち出し [許可事項]
スキューバーダイビング・シュノーケリング・シーカヤック・指定された場所でのキャンプ私たちはこの島に入るため、40ペソを払いベルトをつけます。これはメキシコの環境省が発行しているもので、メキシコのすべての国立公園に入るのに必要なものです。環境省はこうして集まったお金を島の保護活動に充て、島を紹介するパンフレットを作成するなどしています。こうして私たち利用者が持続的にその自然を利用できるようになっています。

 


エコツーリズム体験1日目
これから始まる2泊3日の実習に期待と不安を抱きつつ、学生たちは島に向かいました。

この船で島まで連れて行ってもらいます 出発前の学生たち

 

潮風を受けつつ波に揺られること約1時間半・・・島に到着です!!

 全体的に曇っていたので青い海!!白い砂浜!!というわけにはいかなかったですが、遠浅の海はどこまでも透き通っていて見る人を感動させてくれました。

島に着いた生徒たちはスタッフの方から島における注意点・トイレの使い方などについて説明を受けました。


 ここで、今回お世話になったスタッフの方々の紹介をします。シーズン中、島に駐在しておられる管理人のアヴディエルさん、船のキャプテンのハビエルさん、同じくキャプンのイヴァンさん。オーナーのラロさん、スタッフのアドリアンさん、日本人スタッフのTakakoさん、Yoshieさんにお世話になりました。

  皆さんはラパスにあるBaja Paradiseというペンション兼ツアー会社のスタッフです。

さらに今回はUABCSからメキシコ人学生も4人参加してくれました。アルフレッド、パコ、アブラハム、イジェルモです。

 

 

←左からハビエルさん、アドリアンさん、アブディさん

 

 

Yoshieさん Takakoさん ラロさん イブァンさん


今回の実習は以下の4つのセクションで構成されました。

① シュノーケリング体験・ シーカヤック体験

② Los Islotesにおける海洋生物観察

③ シーカヤックによるマングローブ観察・Espiritu Santoにおける陸上の動植物の観察

④ Espiritu Santo の植生調査
 

 

【シュノーケリング・カヤック体験】

  昼食の後、3班に分かれシュノーケリング・カヤックの練習を行いました。


 インストラクターのYoshieさん・イヴァンさんのガイドのもとシュノーケリングの練習が始まりました。泳ぎながら休憩する方法・潜り方など実際にキャンプサイト周辺の海洋生物を観察しながら学びました。

  シュノーケリングの様子↓



   水上では日置教授の指導の下、シーカヤック体験が行われました。このキャンプにおけるシーカヤックの主たる目的はエコツーリズムにおけるシーカヤックの重要性を理解することです。シーカヤックは自転車などと同様に、動力は漕ぎ手自身の力です。また、単に燃料などの問題だけではなく、騒音や大気汚染が他の移動手段より格段に少ないため、環境への負荷を極端に抑えられるところに最大のメリットがあるといえます。また、シーカヤックはスピードがゆっくりであるため、海上から生物や岸壁の地層をじっくり見ることができ、新たな発見を促すことにも役立ちます。そんなことを頭の片隅に置きつつ、学生達は浅瀬で簡単に操縦方法の指導を受け、沖へ向かいました。始めこそうまく操縦できなかった学生も序所に慣れはじめ、岩の上を動くカニを観察し
たり、止まって波を感じたり、海の自然を全身で感じているようでした。

  漕ぐこと約1時間、el Meztenoに到着です。ここは沖から少し入り込んだ地形になっているため波が弱く静かで、そのため砂もとてもきめが細かく、同じ島でもキャンプサイトとはまったく異なっていました。この島の様子について日置教授に説明を受けながらマングローブを観察し、帰小さな洞窟とマングローブを観察してキャンプサイトに戻りました。



   同じ頃、陸上ではスタッフのアヴディエルさんのガイドのもと島の観察ツアーが行われていました。写真を見てもわかっていただけると思いますが、基本的に岩場のため道はありません。蛇の生息ポイントやサボテンを避け、道を選びつつ全身を使って登っていきました。普段島で暮らしているだけあってアヴディエルさんはさすがの身のこなし!!軽々と登っていきましたが、学生(特に女の子)は少し大変そうでした。しかしそれだけの甲斐はあり、丘から見下ろす景色はすばらしいものでした。また、道中トカゲやサボテン等、動植物だけのなく、昔先住民が食べた貝殻の跡も見ることができ、今こそ無人島ではありますが、昔確かに人が住んでいたという事を感じることができました。 


 

 

 

 

Los Islotesでの様子。ここはアシカのコロニー


【シーカヤックによるマングローブ観察・Espiritu Santoにおける陸上の動植物の観察】

①チン(転覆)したら)


②すぐにパドルをカヤック内に入れ、岸まで押します。


③逆さにして水を出した後、専用のポンプでカヤック内に残った水を吐き出します。

さて、キャンプサイトに戻り、午後はシーカヤック班とハイキング班に分かれての活動です。シーカヤック班はまず転覆した際の処置を前もって練習した後、日置教授を筆頭に沖へ出ました。

①チン(転覆)したら ②すぐにパドルをカヤック内に入れ、
岸まで押します
③逆さにして水を出した後、専用のポンプでカヤック内に残った水を吐き出します



 これで2日目が終了です。今日は夕方に雨が降りましたが、夜にも雨が降りました。濡れないように屋根のあるところにいるとビショビショに濡れたオーナーのラロさんやスタッフのアヴディエルさんがやってきて「僕たちは雨にぬれることがとても好きなんだ」と、すごく嬉しそうに話してくれました。日本とメキシコの気候の違いではありますが、私たちが水に恵まれて生きていることを改めて感じさせられました。



【Espirito Santoの植生調査】

  最終日はしっかりEspirito Santoの植生調査をおこないます。

  今回のテーマは景観区分を行ことです。植生は地形・気候・土壌・地質により決まります。そのため、同じ傾斜地の岩場といっても標高により土壌中の水分条件・栄養条件が異なるため職制は異なり、景観が変化します。今回は日置教授の指導のもと、景観の違いにより調査対象を5つ設定、その中の植生・地形・土壌を調査しました。学生たちはグループに分かれ、プロット内の植物の高さ・幅・種類の他、土の状態・地形を記録していきました。作業は約1時間半で終わりましたが、学生たちは寮に戻った後さらに解析を行いました。

調査を行う学生たち(左:砂地と尾根、右:平坦な岩地

  以上でエコツーリズム体験の全ての内容が終了し、後は帰るだけ!のはずだったのですがトルメンタ・トロピカル(熱帯低気圧)に当たってしまったらしく、嵐のような天候、テントで待機となりました。今日はもう帰れないかもしれないという不安を抱えつつ、待つこと4時間以上、天候が回復した一瞬の隙にラパス港へ向けて出発しました。途中、マンタに会えるという特典付きで、無事帰ることが出来ました。

  この2泊3日のなかで、予期せぬことも含め、さまざまな体験を通して学生たちは自然のすばらしさ、雄大さと怖さを感じるとともに、自然への感謝・尊敬の念を抱き始めことだと思います。実習後、学生たちには調査・実習内容をまとめて、ツーリズムと自然保護のバランスについて考えてもらいました。各々考えは異なるでしょうが、改めて自分たちの経験と重ねて考えることでエコツーリズムに対する認識が少しでも深くなったのではないでしょうか?

  協力してくださったBaja Paradiseの皆さん、すばらしい体験をさせてくれたEspiritu Santoへ、ありがとうございました。


 

 

豪雨で山に川ができました!! 水が迫ってきたのでテントを避難させる学生たち

 

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