THE LA PAZ TIMES 2009 No.10

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月 日

1限
(9:00~10:30)
2限
(10:40~12:10)
3限
(13:10~14:40)
4限
(14:50~16:20)
5限
(16:30~18:00)
11 9 スペイン語⑱ 国際コミュニケーション論⑫ 自然・生存環境概論⑥ 自然・生存環境概論  
11 10 スペイン語⑰ 国際コミュニケーション論⑦ 自然・生存環境概論⑧ 自然・生存環境概論  
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フィールドワーク 5:古代遺跡周辺の過去の人間活動が自然に与えた影響に関するフィールド調査
フィールドワーク 6:産業活動や住民生活でのエネルギー消費に関する調査実習

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フィールドワーク 5:古代遺跡周辺の過去の人間活動が自然に与えた影響に関するフィールド調査
フィールドワーク 6:産業活動や住民生活でのエネルギー消費に関する調査実習

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フィールドワーク 5:古代遺跡周辺の過去の人間活動が自然に与えた影響に関するフィールド調査
フィールドワーク 6:産業活動や住民生活でのエネルギー消費に関する調査実習

  

    今週から農学部の佐野先生、地域学部の田川先生のフィールドワーク5・6が始まりました。今回のフィールドワークでは11月12日(木)~16日(月)の4泊5日の日程で、ラパスを抜け出し南バハカリフォルニア州の北の町、ゲレロ・ネグロやサン・イグナシオ、ロレトなどを訪れ、乾燥地域においての植生調査や、世界遺産にも指定されているサン・フランシスコ山の壁画見学、アンケートを通じて各家庭においてのエネルギー消費量の調査を行いました。

12日-サン・イグナシオでのアンケート調査
 朝5時に学生宿舎を出発し最初の目的地であるサン・イグナシオを目指しました。崖道を通り進んでいくバスの窓からは海や山、丘など、様々に移り変わっていく景色を楽しむことができ、9時間という長時間の移動時間も労なく過ごすことができました。

 サン・イグナシオはホエールウォッチングでも有名な砂漠のオアシスのような場所で、湧水がありヤシの木に囲まれているとても可愛らしい街です。サン・イグナシオの人々はとても気さくで優しく、アンケート調査にもイヤな顔ひとつせず答えてくださいました。アンケート調査の後ゲレロネグロに向けて出発し、夜7時半ごろに到着しました。

  
夜のサンイグナシオ                      車窓からの風景は山あり、海あり

 

↓冬景色?ではありません。一面、塩です

13日-ESSA
この日はゲレロネグロにある世界最大の塩田を訪れました。ここは塩を生産する際に重要な「豊富な日光量」「風がふくこと」「海水を溜めておきやすい土壌(粘土質)」「雨が降らない」という4つの要素がそろっており、55年前に三菱商事が49%、メキシコ政府が51%出資して設立された会社ESSA(Exportadora de Sal,S.A.de C.V.)によって運営されています。この塩田の大きさは500㎢で東京23区とほぼ同じ大きさにあたります。ここでは1日に2万~2万4千トンの塩が生産されており、年間では600~700万トンで毎年の需要によって生産が調整されます。
 塩の生産方法ですが、まずポンプで海水をくみ上げ、土地の傾斜とポンプを使って深さ60cmの塩水池に順番に塩水を流していきます。流す速度は塩水の濃度や蒸発のスピードによって調節されています。最後に結晶になった塩を洗浄して輸出されていきます。すべての工程が完了するまでに2年の歳月がかかります。また、ここで使用されているエネルギーについては敷地内に火力発電所を設け自社でまかなわれていました。その後、CIBNORのゲレロネグロ支部を訪れ、企業経営されている農場を見学して再びサン・イグナシオに戻ってきました。
ゲレロネグロは年間降水量が50mm以下という乾燥地域にも関わらず、私たちが訪れた時はまさかの雨にみまわれました。)
↑塩の結晶

14日、15日-1回目、2回目植生調査&壁画
14日、15日は世界遺産にも指定されているサン・フランシスコ山への壁画の見学と植生調査を行いました。
壁画に関しては、太平洋にもカリフォルニア湾にも遠い場所に位置しているにも関わらずクジラや魚が描かれているなど、わかっていないことが多く、その中でもどのようにして高い位置に描いたかということが最大の謎です。大体の壁画は普通の人なら届かないような高い位置に描かれており、それがなぜその位置に、またどのようにしてその位置に描いたかという方法は解明されていません。その地域に育っているヤシの木ではしごを使って描いたというヤシの木説。その地域には巨人が住んでいたという巨人説など諸説ありますが、まだはっきりとはわかっていません。しかし、壁画はその当時その地域に人が生息していることを示しており、その当時のことに思いをはせると神秘的かつ感慨深い思いでした。
壁画見学の後は、植生調査を行いました。日置先生の実習と同様にプロットを設置しての植生調査にプラスして、今回は樹木の調査も行いました。日本では全く見られないような植物や樹木、例えばこっちの代表的なサボテンであるカルドン、バハカリフォルニア半島でしか見ることのできないシリオというヤシ科の木を観察することができました。またこっちの標高や気象条件の違いによる植生の差、優先種の差なども観察することができ、とても有意義なものとなりました。


16日-ロレトでのアンケート
最終日のこの日は、朝からバスに乗りラパスに向けて南下していきました。途中ロレトという街に立ち寄り、田川先生の方の最後のアンケート調査を行いました。ロレトは南バハカリフォルニア州の最初の州都で観光業が主産業の街です。今まで訪れた街がとても寒かった(寒いと言っても日本の真冬ほど寒くはなかった。気温は15度くらい。)のに対し、ここロレトはとても暖かい場所でした。しかし夏はとても暑いらしく、冬にロレトを訪れた人が気に入ってロレトに別荘を建て、夏に訪れた時に暑さに嫌気がさして売ってしまうということが多々あるそうです。個人的にはロレトはとてもキレイな街で、時間がゆっくり流れている場所だなという印象を受けました。
アンケート調査終了後、再びラパスに向けて出発しました。その途中にいくつもの素敵なビーチを見かけました。このあたりはビーチがキレイなことで有名で、若い人たちがよく訪れるそうです。ビーチや様々な景色を見ながら学生宿舎に夜の9時頃到着し、今回の4泊5日の旅が終わりました。
今回の旅では、ラパスにいるだけでは見ることも知ることもなかったであろう様々なことを知るとてもいい機会になりました。
最後に、このツアーに参加してくれたメキシコ人学生、先生方、ESSAの職員の方、訪問した農場の方、壁画までの道のバンの運転手さん、バスの運転手さん、関わってくださったすべての方に心から感謝します。本当にありがとうございました。横山)

~メキシコについて~

メキシコ人と聞くとどんなイメージを抱かれますか?

私はここに来る前は、メキシコ人がどういう人達なのかということを、全くといっていいほどイメージ出来ていませんでした。しかし、ラパスに来て2カ月以上経過した今となっては、私たちは彼らのことがとても好きになっています。そこで今回は、このプログラムを通して気づくことができた、「メキシコ人の良さ」について少し紹介したいと思います。

メキシコ人の人達は、率直に言うと、陽気で気さくで踊り好きでお酒好きで、そしてレディーファーストを大切にします。しかし時間にはルーズです。

私たちの中には、海外初の人も多くいて、不安を感じつつあった私たちを、メキシコ人の友達は快く、そして温かく迎え入れてくれました。そこで一気に私たちは不安を解消することができました。週末になるとフィエスタ(パーティー)を日本人とメキシコ人とで開くことがしばしばあり、その際も彼らは場を大いに盛り上げてくれます。そして彼らは本当に踊りが大好きです。私たちもよくディスコに誘われて、一緒に踊ったりしますが、メキシコ人の踊りの上手さには驚かされます。週末になるといつも大音量の音楽が遠くの方から宿舎にも聞こえ、メキシコ人が楽しそうに踊っている様子が目に浮かびます。

また、私たちはフィールドワークの際、アンケート調査をしばしば至る所で実施することがあり、市民の人々に協力をしていただくことがありますが、その際も彼らは嫌な顔ひとつせずに親切に答えてくれます。

メキシコではレディーファーストが当たり前のように徹底されており、以前紹介されていたペセロ(循環バス)でも、男性が女性に席を譲るのはごく自然な光景であり、他にも至る所でメキシコでは女性優先の考えが浸透していることに気付かされます。

そんな彼らも時間にはルーズであることが多いようです。例えば約束の時間になっても現れない、などといったこともありますが、私たちはそれを「メキシカンタイム」と呼び、今では少し慣れつつもあります。彼らは多くの日本人が失いつつある本当の意味での心の温かさや広さといったものをいつでも持っているような気がして、見習うべき点もたくさんあるように感じたりもします。これからもメキシコ人との親交を深めてもっと彼らのことを知っていけたらなと思います。(井口)




 

・・スタッフから一言・・

  2006年にメキシコ海外実践教育カリキュラムをスタートして4年目にして、今回初めてバハ半島北上の旅を実行しました。バハカリフォルニア半島は長さ約1200km、幅が細いところで約45km、という細長い半島で、太平洋側とカリフォルニア湾側では気候も違い、そのため植生もまったく異なってきます。ラパスから北上すること770km、そこにはゲレロネグロという人口1万人の町があります。学生からのレポートにもありますが、この町は世界最大ともいわれる塩田の町。そして鳥取大学とのメキシコの関係は、ここゲレロネグロからスタートしました。

1982年~1987年に竹内農学部名誉教授らが文部省科学研究費海外学術調査「乾燥地域の農業開発に伴う耕地生態系の保全と生産性に関する研究」を、ゲレロネグロで実施。この研究の高い成果を得て、同じくゲレロネグロにて1990年~1997年JICAのプロジェクト技術協力「メキシコ沙漠地域農業開発計画」の実施に発展、鳥取大学の多くの教員が、年間降水量50mという乾燥地域での野菜・果樹生産技術確立に貢献しました。プロジェクト終了後に、この研究施設・設備を継承したのが、ラパスのCIBNORであったため、1998年に鳥取大学とCIBNORとの学術交流協定の締結へと進み、ゲレロネグロの研究施設はCIBNORのゲレロネグロ支部となりました。

現在CIBNORゲレロネグロ支部では、20年近く前にJICAプロジェクトで設置した分析機器や測定装置が大切に使用されており、植物・水・土壌の分析ラボとしては、メキシコの他地域に類を見ないほどの整った設備が維持されています。CIBNORゲレロネグロ支部長のラウル・ロペス博士は、実は鳥取大学農学部の卒業生。今回の私たちの大勢での訪問を快く迎え入れてくれました。

現在、ラパスを中心に、多くの鳥取大学の学生たちを送り込んで実習・講義を実施していますが、こうした大規模な学生派遣プログラムが実施できるのも、過去30年間という、鳥取大学とここバハカリフォルニア州での信頼関係があるからこそ成り立っています。これらの関係を築いてきて頂いた先生方、そしてメキシコ人の方々に感謝しつつ、ゲレロネグロを後にしました。(N.F.)

 
 

<<PHOTOS>>

ゲレロネグロ塩田。塩洗浄場にて。収穫した塩が洗浄機に落とされていきます

はるか向こうに見えるSan Francisco山脈 シリオという不思議な樹木
 壮大な景色を背景に 植生の違いについてのレクチャー
壁画を見ながらランチ

~コラム~

 今月はたくさんのメキシコの芸術に触れることができました。
前回までのラパス便りで紹介されていたスポーツ同様、芸術もまた言語等の壁を越えて、意思の疎通が可能です。
今週のフィールドワークでは、植生調査及びエネルギー調査の一環として洞窟壁画を見学しました。ラパスから約630kmはなれたSan Ignacioという町に程近い、San Francisco山脈に点在する壁画群は、UNESCOの世界遺産にも登録されており、その数は約3000個と言われています。壁画は地上から高さ10m程離れた壁面に描かれています。主に植物及び鉱石,血から得られた3色(赤・黒・白)を用いて、ヒトや動物(哺乳類・魚類)など特徴のある絵が描かれていました。私達が訪れたEl RatonとEl Palmaritoという2地点の壁画は約4000~10000年前に描かれたものだそうです。
さて、これらの壁画ですが実際には多くの疑問点が存在します。皆さんも前述した文章から感じていただけたのではないのでしょうか?
第一に、どのように壁画が描かれたのか。
前述したように、壁画は決して手の届くことのない高さに描かれています。この疑問に対してはいくつかの仮説が存在します。本日はこれらの仮説の内、最も私が興味を持った仮設を紹介します。
“巨人説”です。壁画が描かれた当時、人々の身長は現在より高く、これにより届くはずのない壁面に絵を描くことができたという説です。初めてこの仮設を耳にした時には、誰もが耳を疑うことでしょう。しかしながら、現地では実際に現在よりも大きな人骨が発見されています。また、はじめてスペイン人が壁画を発見し同様の質問をした際にも、原住民(壁画を描いた民族の子孫ではない)は「巨人により描かれた」と回答したそうです。
その他にも、たくさんの “不思議” に出会うことができます。例えば、描かれた人物画は全て両手を上にかざしています。
なぜヒトは両手を天にかざしているのでしょうか?


標高1000mを超える高地にも関らず、魚を知っていたのは何故でしょうか?
これらの “不思議” に対して上記以外にも多くの仮説が存在します。数年前にはこれらの疑問を解決するため米国の調査団が来訪しました。しかしながら、今なお解明されていません。
この研修を通して、日本で経験することのない体験を私たちは経験しています。本音を言えば、英語のスキルアップのみを目的として私は本研修に参加しました。しかしながら、現在では芸術やスポーツ、その他メキシコの文化に接することに対し、本当に喜びを感じています。言葉では上手く伝えることはできません。しかしながら、いつの間にか自身の価値観・考え方は少しずつ変化していたようです。
残り約3週間となりましたが、まだまだ自身を成長させることは可能です。そのためにも得られるものは全て得るつもりです。帰国後には成長した自分を見せることができるでしょう。
残り短い期間となりましたが、暖かく見守って頂ければ幸いです。応援よろしくお願いします!! (浦上)

 

 

 

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