メキシコ海外実践教育カリキュラムでは、フィールドワークのサポートのため修士学生がTAとして参加します。TAというカリキュラム参加学生とは違った立場、視点から、それぞれのフィールドワークについて、少し掘り下げてレポートしていきます。
【生態環境実習編~Espiritud Santo島でのエコキャンプ~】
農学研究科景観生態学研究室TA 吉田 美幸
毎年恒例のビッグイベントの1つである無人島Espiritu Santoでのキャンプがやってきました!!キャンプといっても私たちが行うのはエコツーリズムです。最近「エコ」という言葉をよく耳にしますが、そもそもここで言うエコツーリズムとはどういうことなのでしょうか。

さて、今回エコツーリズムを行ったEspiritu Santo Island(エスピリトゥ・サント島)はLa Pazの北50kmほど離れた所に浮かぶ大きな二つの島とその周辺にある無数の小島から成り、全長22km(約80.8k㎡)あります。周囲を海洋で囲まれているため、世界でもここでしか見られない生物が多く存在しており、生態学的に非常に価値が高い地域だと考えられています。そのためメキシコ政府によってカリフォルニア湾岸の植物および動物保護地域の1つに指定されています。また、この島を含む全域が「カリフォルニア湾の島々と自然保護区」として世界遺産にも登録されています。その為、この地域では生態系への人的影響を最小限に抑え、持続的利用を行うために、利用に際していくつかの活動規制があります。具体的には以下のように定められています。
[禁止事項]
水上スキーの乗り入れ・ガイドの許可なしでの生物への接触・焚き火・外部からの生物の持込・生物への餌付け・歴史的遺産の持ち出し [許可事項]
スキューバーダイビング・シュノーケリング・シーカヤック・指定された場所でのキャンプ私たちはこの島に入るため、40ペソを払いベルトをつけます。これはメキシコの環境省が発行しているもので、メキシコのすべての国立公園に入るのに必要なものです。環境省はこうして集まったお金を島の保護活動に充て、島を紹介するパンフレットを作成するなどしています。こうして私たち利用者が持続的にその自然を利用できるようになっています。

エコツーリズム体験1日目
これから始まる2泊3日の実習に期待と不安を抱きつつ、学生たちは島に向かいました。

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この船で島まで連れて行ってもらいます |
出発前の学生たち |
潮風を受けつつ波に揺られること約1時間半・・・島に到着です!!
全体的に曇っていたので青い海!!白い砂浜!!というわけにはいかなかったですが、遠浅の海はどこまでも透き通っていて見る人を感動させてくれました。
島に着いた生徒たちはスタッフの方から島における注意点・トイレの使い方などについて説明を受けました。
ここで、今回お世話になったスタッフの方々の紹介をします。シーズン中、島に駐在しておられる管理人のアヴディエルさん、船のキャプテンのハビエルさん、同じくキャプンのイヴァンさん。オーナーのラロさん、スタッフのアドリアンさん、日本人スタッフのTakakoさん、Yoshieさんにお世話になりました。
皆さんはラパスにあるBaja Paradiseというペンション兼ツアー会社のスタッフです。

さらに今回はUABCSからメキシコ人学生も4人参加してくれました。アルフレッド、パコ、アブラハム、イジェルモです。
←左からハビエルさん、アドリアンさん、アブディさん

Yoshieさん |
Takakoさん |
ラロさん |
イブァンさん |
今回の実習は以下の4つのセクションで構成されました。
① シュノーケリング体験・ シーカヤック体験
② Los Islotesにおける海洋生物観察
③ シーカヤックによるマングローブ観察・Espiritu Santoにおける陸上の動植物の観察
④ Espiritu Santo の植生調査
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【シュノーケリング・カヤック体験】
昼食の後、3班に分かれシュノーケリング・カヤックの練習を行いました。
インストラクターのYoshieさん・イヴァンさんのガイドのもとシュノーケリングの練習が始まりました。泳ぎながら休憩する方法・潜り方など実際にキャンプサイト周辺の海洋生物を観察しながら学びました。
シュノーケリングの様子↓

水上では日置教授の指導の下、シーカヤック体験が行われました。このキャンプにおけるシーカヤックの主たる目的はエコツーリズムにおけるシーカヤックの重要性を理解することです。シーカヤックは自転車などと同様に、動力は漕ぎ手自身の力です。また、単に燃料などの問題だけではなく、騒音や大気汚染が他の移動手段より格段に少ないため、環境への負荷を極端に抑えられるところに最大のメリットがあるといえます。また、シーカヤックはスピードがゆっくりであるため、海上から生物や岸壁の地層をじっくり見ることができ、新たな発見を促すことにも役立ちます。そんなことを頭の片隅に置きつつ、学生達は浅瀬で簡単に操縦方法の指導を受け、沖へ向かいました。始めこそうまく操縦できなかった学生も序所に慣れはじめ、岩の上を動くカニを観察し
たり、止まって波を感じたり、海の自然を全身で感じているようでした。
漕ぐこと約1時間、el Meztenoに到着です。ここは沖から少し入り込んだ地形になっているため波が弱く静かで、そのため砂もとてもきめが細かく、同じ島でもキャンプサイトとはまったく異なっていました。この島の様子について日置教授に説明を受けながらマングローブを観察し、帰小さな洞窟とマングローブを観察してキャンプサイトに戻りました。
同じ頃、陸上ではスタッフのアヴディエルさんのガイドのもと島の観察ツアーが行われていました。写真を見てもわかっていただけると思いますが、基本的に岩場のため道はありません。蛇の生息ポイントやサボテンを避け、道を選びつつ全身を使って登っていきました。普段島で暮らしているだけあってアヴディエルさんはさすがの身のこなし!!軽々と登っていきましたが、学生(特に女の子)は少し大変そうでした。しかしそれだけの甲斐はあり、丘から見下ろす景色はすばらしいものでした。また、道中トカゲやサボテン等、動植物だけのなく、昔先住民が食べた貝殻の跡も見ることができ、今こそ無人島ではありますが、昔確かに人が住んでいたという事を感じることができました。