THE LA PAZ TIMES 2009 特別編 No.2

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~TA(ティーチング・アシスタント)から見たメキシコ海外実践教育カリキュラム~

 

 10月26日~11月6日、教育センター永松准教授による『メキシコにおける公共政策調査』を実施しました。
このフィールドワークの中で、まず、現地での公共政策についてのアンケート調査票を作成し、州庁舎や市役所など、公共施設を訪れ調査しました。その後、CS分析法という統計計算法を用い極力主観を取り除いた客観性の高いデータを導き出しました。この分析によって、ラパス市民の州や市に対する満足度や考えを浮き彫りにしようというものです。私達の学習のためだけの調査ではなく、毎年お世話になっているこのラパスという地にとっても、利益のあるものになればというコンセプトの下行われました。
この実習の一環として州庁舎を訪れた際に、州庁舎内を見学させてもらい、州庁舎職員によってラパスの様々な現状について教えていただきました。これは、今年で4年目となる海外実践メキシコカリキュラムの中で初めてのことです。
では、そこで得られた知見を踏まえつつ、メキシコ、ラパスという地について少し詳しく説明していきたいと思います。

ラパスは南バハカリフォルニア州の州都であり、人口20万人を超える街です。人口は今も大きな増加傾向にあり、観光の町でもあります。スキューバダイビングの聖地であり、今までのラパス便りにすでに記載されている通り、エスピリトサント島やアシカの生息地であるロスイスロテス島、冬場のフォエールウォッチングなどが有名です。メキシコ国内からの観光客が8割、国外からの観光客が2割を占めるそうです。また海外からの観光客の15%が日本人ということでした。
南バハカリフォルニア州では、豊富な自然の資源を生かして、観光業を重視した政策方針を取っているようです。
そして、大切な自然資源である海の水質を保つために各地点で定期的に水質分析をし、質が落ちないように保っているそうです。彼ら曰く、ラパスの海の水質は世界一だとのこと。
ラパス近郊は、メキシコ全体の中でも変わった特性を持つ土地です。ラパスはカリフォルニア半島の南部に位置し、昔、火山活動による土地の隆起によってできました。そのため、たくさんの固有種が存在しています。海岸性砂漠気候であり、水の少ない土地です。そのため、メキシコ本土に比べて、農業は比較的小規模で、本土から野菜を運んでいるので、野菜などの物価が高くなっているそうです。

これから改善していく必要のある問題として、ゴミ問題や道路整備などが挙げられます。ゴミ問題に対しては、徐々に分別の大切さを知らせ、オーガニック(有機ゴミ)とインオーガニック(無機ゴミ)というように、分別のためのゴミ箱が設置されるようになってきています。しかし、未だ、ゴミ処理場での分別が行われていないため、ゴミ分別は意識向上に一役買っているものの、実質的な効果はまったく無いといった現状にあります。
  また、道路整備の面では、一見きれいに整備されているように見える道路でも、少しの衝撃や雨で道路が陥没し、大きな穴ができるなどの問題があります。さらに、そのように陥没した穴は、なかなか修復されず、長い間放置され、それがまた簡易に修復されるという悪循環になっているようです。

  このような問題点も教えてもらいました。確かにラパスにはまだ解決しなければいけないたくさんの問題を抱えているようです。しかし、そのことを意識しているからこそ、このように私達に説明することが可能だったのだと考えると、ラパスの将来は暗いものではないと考えられるのではないでしょうか。

  また、州庁舎では、州全体から情報を集め、ラジオやテレビなどの宣伝広告を通して州民に伝える役割を担っているそうです。独自で新聞も出版しているとのことでした。また、州民全体の健康改善に力を入れていて、様々な健康に関する宣伝や健康に対する活動を支援しているということでした。
  そして、州庁舎の中を今回は特別に見学させてもらいました。
 

 

知事執務室。知事は残念ながら不在でした 知事だけが立ち入ることができる緊急通路
知事執務室にて 現州知事Agundez氏
↑ここで会議をし、南バハカリフォルニア州の政策や方針を決めています  
  南バハカリフォルニア州旗

独立記念日の際、知事はここから演説します。
今年この演説を広場から見上げながら聞いていた学生達にとって、この場に立つことは感動的であり、興味深いことだったようです

 

←歴代の知事の写真とともに一枚

来年2010年は、独立200周年記念です。
それにともなって早くもカウントダウンが始まっています。
長年スペインの支配下にあったメキシコにとって、
独立記念日とは誇りを取り戻した日であり、
最も重要な行事の一つです
 

 

 調査票は、日本語から英語へ、英語からスペイン語へと二段階の翻訳を経て作成したしたもので、現地メキシコUABCSの学生さんのサポートを得ながら作成しました。覚えたてのスペイン語を駆使してのアンケート調査は、拙いながらも通じたときの喜びは人一倍。またいつも気軽にアンケートに答えてくれたラパス市民の協力もあって、こちらが想定してた枚数よりはるかに多くのアンケートを学生たちは取ってきました。

 


 最終日には、この実習の総まとめとしてプレゼンテーションを行いました。その際、メキシコ人を招き、彼らの前で南バハカリフォルニア州の公共政策に対して、データ結果から導き出すことができた問題点や改善点などを提言していきました。この地の現状に対して全てを把握しているわけではない学生たちの提言は、メキシコ人達にとってしっくりこないこともあるようでした。
 しかし、データ自体は客観性があり信憑性のあるもので、メキシコ人たちも興味を示していました。また、日本人の目からメキシコの現状を見ることで、メキシコ人が気づかなかった視点を与えることができたのではないでしょうか。
 そして、観光地であるここラパスでは、私たちのような海外からの視点は重要なはずです。このプレゼンテーションの中で、意見交換がされ、日本人学生はよりメキシコについての見識を深め、メキシコ人達もメキシコの公共政策について改めて考える良い機会になったのではないでしょうか。


たくさんのメキシコ人が集まってくれました

 最後に、この調査が滞りなく進んだのは、ひとえにメキシコ人の多大な協力に由ります。州庁舎の職員にしてもそうですし、アンケート調査に協力してくれたラパス市民、アンケート作成に協力してくれたメキシコ人学生。
日本人は尋ねられた時、何かと外国人というだけで一歩ひいてしまいがちですが、メキシコ人にそのような態度は見られませんでした。その人間性に個人的ですが非常に好感を得ました。
今回のこの実習で、調査自体の相互利益のみならず、調査を遂行する上でのメキシコ人と日本人の連携が強調されたのではないでしょうか。惜しみない協力をしてくれた、メキシコ、ラパスの方々へ多大なる感謝の気持ちを送りたいと思います。 ありがとうございました。
 

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