学生派遣の前に

 

The Road to UC Davis
~デービス学生派遣の前に~

UC Davis(カリフォルニア大学デービス校)は、農学分野で全米トップクラスの伝統のある大学で、本学と学術協定を締結しています。その名の示す通り、カリフォルニア州の州都サクラメント(Sacramento)から、バスで30分ほどのところに位置しています。デービス地区は、大都市の騒がしさもなく、緑に囲まれ自然豊かな穏やかな大学を中心とした街並みが形成されています。気候は、真夏でも乾燥しているので日本のような蒸し暑さは感じられず、気温は日本と同じ位ですが、外にいても汗をほとんどかかず、快適に過ごせます。
デービスの正門?  広大なキャンパス
今回、UC Davisの8月から始まる1カ月の英語プログラムに、初めて鳥取大学学生9名が参加することになり、その受け入れや英語授業の内容を協議するため7月27日から8月2日までUC Davisを訪れました。

まず、最初に驚いたのはキャンパスの広さで、大学関係者によると5000エーカー以上で、これはカリフォルニア大学系列校(バークリー、ロスアンジェルス等)の中で最も広大だということです。またキャンパスは年々拡大、再開発を続けており、近年では、従来の農学や環境領域に加えて、社会科学系領域にも力を入れており、訪問中に、法科大学院校舎や新しい学生寮も建築されていました。
事前協議は、同大学副学長(国際プログラム担当)のウィリアム・レイシー氏、エクゼクティブ・ディレクターのベス・グリーンウッド氏とデービス校の現在の日本の大学との関係についての協議を行いました。レイシー副学長はフルブライトプログラムも担当しており、先日日本へも立ち寄り、文部科学省、名古屋、京都、大阪、広島等を訪問したとのことで、日本の大学の経営や研究教育政策の動向について非常に関心を持っており、日本の大学の学生の現状、研究教育上の問題、また日本の大学から海外へ留学する学生数が減っている理由などについてかなり細かい意見交換を行いました。その後、将来的な展望として、鳥取大学の大学院生をどのような形かでデービス校の大学院のプロジェクトなどに参加させることを考えたい旨を述べられ、今後の検討課題として残しました。

現在建設中の法科大学院校舎

↑建設中の法科大学院校舎。社会科学系も充実させ、総合大学化を進めている。

謎のモニュメント2謎のモニュメント←この種のモニュメントがあちこちに設置されている。由来不明。

次に、8月から学生が参加するInternational English and Professional Programについての協議を行うために、これを管轄するUC Davis エクステンションのディレクターであるティナ・カスティロ氏、プログラム・コーディネーターのマリー・クルームレイ氏と同プログラムの内容と鳥取大学学生の英語水準などについての協議を行いました。カリフォルニア大学のなかでもデービス校の英語プログラムが最も歴史が長く、経験もあるということで、さまざまなニーズに基づいたコースが開発されているようです。 英語プログラムが行われるエクステンションの校舎
実際、訪問期間中には、英語初級レベルのクラスから、大学院博士候補生のプロフェッショナル英語スキル開発コースまで開講されており、決して従来の手法のみに限定せず、常に学生のニーズや社会的必要性を見据えて、コースの内容を変えながら言語教育を発展させているということでした。そのため、場所柄、太平洋側に大学が位置しているため、その自然豊かで安全な環境も幸いし、日本、韓国、中国、台湾などアジア系の学生を多く受け入れており、とくに8月のプログラムは繁忙期で、数百人の国際学生を予定しており、なかでも日本人学生はその50%超を占めるであろうということでした。7月にも日本の幾つかの大学の学生がすでに学んでおり、彼らは6カ月のプログラムに参加しており、経済や環境をトピックに、専門的英語スキルの向上を目指しているとのことでした。今後、学生の専攻や専門に関する英語を教授することが、学生の英語学習への取り組む動機づけとなるので、日本の大学においてもこのような手法の導入が必要であると指摘されました。
同プログラムの英語教育スキルとしては、ほぼ全員が言語学の博士号を持ち、かつTESOL(Teaching English to Speakers of Other Language:英語以外の母国語を話す人に英語を教えることのできる資格)を有していることで、教育の質を担保しているとのことでした。アメリカの他大学や日本の大学の言語教育の関係者からも、以前、この傾向を耳にしていたので、英語人口の増加とともに教える側の能力向上も重要な項目となりつつあるようです。

その他、同プログラムにパートタイムで雇用されているシニア学生の案内で、大学図書館、スタジアム、カフェテリア、フィットネスジム、ヘルスセンター(医療)等々の施設を見学し、あらためてキャンパスの広大さや緑に囲まれた環境の良さを実感しました。鳥取大学の学生も日本と異なるゆったりした環境の中で学習し、英語が上達することを祈るばかりです。
 
さて、デービス地区は郊外のコミュニティーで、学生は今回、大学寮ではなく一般家庭にホームステイするわけですが、同地区の雰囲気はよく、人々は穏やかで、ごみひとつなく、街並みは緑豊かで整然と静寂でありながらも、中心街にはほどよく生活のための各種店舗が立ち並んでおり、学生が生活をおくる上での危険性は、他のいくつかのアメリカの大都市と比較しても、ほとんど感じられませんでした。また、街並みは大学を中心に形成され、学生や近隣の人々は、主な交通手段として自転車を用いており、鳥大の学生もおそらくレンタルやステイ先の家庭から自転車を借りて使用するものと思われます。アメリカの街角には珍しく、自転車ショップが幾つかみられるのは、この地区の特徴ではないかと思います。州都サクラメントへのアクセスはYoloバスという地元のバス会社が運行しており、ローカルで片道2ドル、急行で3ドル(土日は運行しない)とリーズナブルな料金で利用することができます。時間は片道30分程度で、ウェスト・サクラメントなどの広大な景観をみながらサクラメントへ向かいます。

このような恵まれた環境のなかで、学生は8月から英語プログラムに取り組みます。1ヶ月間という短期のプログラムですが、この短い期間のなかで、英語力を少しでも上達できるかどうかは、その人自身にかかっています。渡航前、数回のガイダンスで述べたように、教室での学習はもちろんですが、いかに積極的にホストファミリーやデービス地区の住人またデービス学生や他国からの留学生と関わっていくことができるかが成功へのステップとなるでしょう。(教育センター:永松利文准教授)