メキシコ海外実践教育カリキュラム 特別編2

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~Sierra de La Laguna特集~


長かったメキシコでの実習も残すところあと一週間。学生たちは残り少ないメキシコでの生活を思いっきり楽しんでいます! しかし、ここにきて最後の関門、1泊2日の森林調査が幕を開けました。学生たちはこのメキシコ生活の中で最も過酷と言われるこの実習を乗り越えることができるのでしょうか?
 まずはこの実習の目的、それは、ラグナ山脈(Sierra de la Laguna)の2つの異なるサイトを調査することで樹木のCO2吸収量を推定し森林の保全や管理方法を提案すること!です。この非常に重要かつ重大なテーマに学生たちが挑んだ雄姿を今回はお伝えします。

はじめに・・・
 森林の吸収量を考えるにあたって、この南バハカリフォルニアのCO2の排出量がどのくらいなのか? また住民一人当たりではどのくらいなのか? さらに森林の保全といったことを考えたときには、住民が環境に対しどのような意識を持っているのか?といったことを知ることが大切になってきます。そこで、今回の実習では、まず地域学部の田川准教授のご指導のもとで、ラパスにおけるエネルギー利用調査を行いました。この実習では、火力発電所の見学や市民のエネルギー消費に関するアンケートを行い、火力発電所や市民からのCO2排出量の実態を明らかにしました。さらに農学部の佐野教授のご指導のもとで森林調査をすることによってCO2吸収側の森林の実態を明らかにします。これらの調査結果から、社会と自然という2つの視点から1つのテーマを考察して発表するといういまだかつてない実習になりました。

 

 

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調査の前に・・・
CO2の吸収量を知るためには木の大きさ、高さを知る必要があり、さらに1年あたりの吸収量を知るには樹齢を知る必要があります。そこで学生たちは事前の講義でこれらを調べる道具の使い方、樹木の大きさからCO2の吸収量を求める方法を学びました。
ここで、2つの調査地で森林調査する意義を説明します。私たちが日ごろ活動しているカリフォルニア半島の北に位置するラパス周辺では、降水量が少なく、気温が高いため、サボテンや刺のある低木が生育する土地が広がっています。しかし、ラパスの北にあるラグナ山脈を登るにつれて降水量が増加し気温が低下するため、標高の違う2つのサイトを調査対象としました。標高300 mを越えると、マメ科の樹木が優占し川岸にはヤシが生えるTropical dry forestと呼ばれる植生がみられるようになります。さらに標高が上がり800 mを越えるとOak forest、つまりブナ科コナラ属の優占する植生が出現します。さらに標高が上がり1500 m以上になるとマツも存在するようになり、Pine-Oak forestになります。このようにラグナ山脈には降水量と気温に対応してさまざまなタイプの森があり、それらの森林の正確なCO2吸収量を知るには異なったタイプの森林で調査をする必要があるのです。

 

 

調査に出発!(1日目)

標高830 m付近のSite 1までは宿舎から車で約2時間30分。道中には牛が道を占拠しているところもあり、そう簡単には目的地にはつけません。山道を登りようやくたどり着いたところにはOakとサボテンが混在する、今までに見たことがない景観が広がっていました。
 

左から、山道では牛が…!?

サボテンと樹木が一緒に生育しています

 

目的地に到着するとまずは佐野教授とCIBNORの研究員のホセ・ルイス・レオン博士に
この場所の自然や植生についてレクチャーを受けました。しかし、ここは山、しかも人が歩く道なんてありません。学生たちはレオン博士に遅れないよう、必死に歩いていました。レオン博士からは野生のヤギや家畜の牛、また、それを襲うピューマがいること。また多くの植物の説明をうけ3種類のOakの見分け方をマスターしました。他にもトルテ・ブルセラという乾期には幹で光合成をおこなう植物やランディアという食べることのできる植物などの紹介をうけ、学生たちは興味深く話を聞いていました。
 

 

※ 左から、①学生が覚えたオークの一種、Quercus devia  
②レオン博士の話を聞く学生
③トルテ・ブルセラの解説をするレオン博士と佐野教授

レオン博士の話が終わり、調査開始です。タイムリミットは3時間、この短い時間の中で、今まで培った班のチームワークを駆使して作業をしていきました。

※超音波測高器で樹木の高さを測ります

何やら相談中?

 

※左から①力いっぱい木の中心に向けて道具を回しながら入れていきます。
    ②木の中心部まで道具が刺さったことを確認して、エクストラクターという幹の
     芯をとる道具を入れていきます。
    ③取り出すと木の芯(コア)が取れます。これから、木の年齢を推定します。


学生たちは、事前に練習した成果を活かして作業を分担して効率よく樹高や幹の太さ、樹種を調べていました。しかし、やはりそう簡単には調査は終わりませんでした。成長錐という、ドリルのように木に差し込み幹のサンプルを採る道具が思うように使えません。乾燥している気候にあるこちらの樹木は日本の樹木に比べとても硬く、道具をうまく使うにはものすごい力が必要だったのです。
 

※苦戦する学生たち。彼らはこの木だけで1時間以上の時間をかけていました。
 最後には佐野教授も手伝いに。相当大変でした…

 

日本ではなかなか折れないこの道具が1日で4本も折れ犠牲になりましたが、どの班も時間内になんとか調査を終えることができました。
 

宿泊は、本来なら山でキャンプをする予定でしたが、安全面で問題があるのと次の調査地に近いということでホテルのデッキにテントを張って宿泊しました。

※テント組み立て中・・・  完成!!!

※夜は皆でディナー 食後の雑談タイム・調査1日目お疲れ様でした!

さて、ようやく1日目が終わりましたが、調査はこれで終わりではありません。
1日目のさらに上を行く過酷な1日が学生を待ち受けていたのでした。

調査2日目!
朝5時半起床、学生たちは、夜も明けきらぬうちからテントを片付け、食事を済ませました。朝が早く疲れの取れきっていない学生たちを癒してくれたのは美しい朝やけでした。 さて、今日も出発です!  
※きれいな朝やけ↓


 
昨日と同じように目的地に到着、と思いきや、今日の目的地はまだまだ先、車では行くことができないため1時間半の道のりを歩かなければいけないのです。
 この場所は1994年に保護地域に指定され、現在では自然保全がきちんとされているそうで、私たちは美しい景観や自然を見ることができました。ここでもレオン博士や技官のライモンドさんのお話を伺いながら歩いていきました。その中でこの一帯には40種類の樹木が生育していることや、マメ科の樹木やイチジクの見分け方などを教えてもらいました。
 

 

 


目的地に到着すると昨日と同じ測定項目について調査をしました。昨日の植生と大きく違うのはここにはOakの木はなくマメ科の樹木が多いことや川沿いにはヤシがあること、そして、昨日より調査をする樹木の本数が多いことです。そのため、昨日馴れたからといっても同じようにうまくいくとは限りません。学生たちは同行していた研究者の方々に積極的に樹種を質問したり、昨日とは手順を変えたりして早く終わらせることのできるよう頑張っていました。
 しかし終わりも近くなった頃になって、1つの班だけ木の本数がとても多く成長錐を抜く調査が終わらなかったため、他の班の学生たちも助けにやってきました。最後には、ほとんどの班の男たちがやってきて手伝っていました。
そして、無事今日の調査も終了です。
調査後には、レオン博士が教えてくれた、小さい池にちょっとだけ遊びに行きました。
とても水がきれいで、男たちは飛び込んで遊んでいました。 しかし、また彼らには帰りの1時間半の道のりが待っているのでした…
 

 

 

以上で、森林の調査は終わりです。
実習が終わった後に学生たちはこの実習をまとめプレゼンを行いました。調査をするだけではなく、調査内容をまとめる段階で様々な分かったことや疑問に思ったことが出てきていました。やはり学生からすると2つの実習の内容を組み合わせることはとても難しかったようです。しかし、ここからきっと学生たちはこのメキシコ研修の目標でもある、問題解決能力を大いに伸ばすことができたのではないでしょうか?
最後に、個人的感想ですが、ある学生が言っていた、「きつかったけど楽しかった。」という言葉がこの実習を物語っているのかなと私は感じました。楽しいだけでは何も生まれない、みんなで協力してやるからこそ、きつい事でも頑張ることができる。こんなことを一人一人が感じてくれたとしたら、この実習も意味のあったものになるのではないでしょうか?
(農学研究科森林生態管理学研究室TA 増井太樹)
 

以上で、森林の調査は終わりです。
実習が終わった後に学生たちはこの実習をまとめプレゼンを行いました。調査をするだけではなく、調査内容をまとめる段階で様々な分かったことや疑問に思ったことが出てきていました。やはり学生からすると2つの実習の内容を組み合わせることはとても難しかったようです。しかし、ここからきっと学生たちはこのメキシコ研修の目標でもある、問題解決能力を大いに伸ばすことができたのではないでしょうか?
最後に、個人的感想ですが、ある学生が言っていた、「きつかったけど楽しかった。」という言葉がこの実習を物語っているのかなと私は感じました。楽しいだけでは何も生まれない、みんなで協力してやるからこそ、きつい事でも頑張ることができる。こんなことを一人一人が感じてくれたとしたら、この実習も意味のあったものになるのではないでしょうか?
(農学研究科森林生態管理学研究室TA 増井太樹)